米ノ津川を背に3号線を走ってゆくと、道沿いに紫色の看板が見えてくる。 2020年の6月から出水に現れたおしゃれなお店。みんなが気になっている、あのお店 “RUGGED”ラギット。


背景に田んぼのグリーン、遮るもののない青空を背負った白い一軒家。

お香の甘い煙をくぐって店内に入ると、心地よい音楽と選び抜かれた面白いアイテム達が並んでいる。

都心のハイセンスなセレクトショップのような品揃えと、どこか南国リゾート地のムード漂う空気感。 RUGGEDの空間に入った瞬間に、自分が地球のどこにいるのか一瞬忘れる。 カウンターでは、オーナーの中里さんが、ちょうど届いた新作アイテムをチェックしていた。

[RUGGED]のロゴがプリントされた秋冬物のウェア。よく見るとロゴの後ろに噴火する桜島が!

隣にはせごどんベア。これまた可愛い。鹿児島への愛と、ブランドパロディセンス、強いリスペクトを感じる。 布地本体、印刷技術、デザイン、一流のハイクオリティでもって仕掛けてくるRUGGEDオリジナル商品のファンも多い。

中里さんは出水生まれ。東京でラッパーとして活動しながらファッションの仕事をスタートし、高円寺の店舗は9年目を迎え、2020年6月5日に[RUGGED KAGOSHIMA]をオープンした。

RUGGEDでは、”レギュラー(80年代~2000年代)”の古着と、面白くクセのある社会風刺の効いたオリジナルアイテムを置いている。 バッグ・靴・帽子などのアイテムや、ひと癖あるアクセサリーや雑貨たち。 身に着けていたら「それ、どこの??」と目を引くような、面白さと魅力的な異彩を放っている。

中里さんはなぜ、出水でお店をオープンしようと思ったのでしょうか?

「出水って、Drスランプアラレちゃんのペンギン村に似てるでしょ。長閑な景色とか色味とか、ポツンポツンと家があってそれぞれ微妙に離れてる感じとか、人のあったかさとか。そこがたまらなく良いなぁって思って。

東京の密集してゴチャゴチャした景色の中にいたから、このシンプルさにすごい魅力を感じた。 スピードの早い流れの中で、ガンガン仕事しながら高い税金を納めて… ふと、せっかく納めるなら自分のルーツのある「好き」な土地に還元したいなと思ったんだ。 東京だとお店がいっぱいあるし、お客さんとのスピードもあっという間ですれ違っていくようだったけど 出水にオープンして、のんびり話しながらお買い物してくれたお客さんに”ありがとうございます”って言ったら 『ここにお店を作ってくれて、ありがとう。』って、逆にお礼を言ってもらえたことがあってね。 価値感を分かち合えて、喜びが目に見える瞬間。あぁ良かったな、と思った。心の豊かさを実感できるね。

平日はかなりのんびりやってます。週末になると、市外からも多くのお客さんが来てくれますね。 服を見ることだけにがっつり集中してくれても嬉しいし、気楽に映画とか好きなカルチャーの話をしに寄るような感覚で、お店に遊びに来てもらえたら嬉しいですね。」

「RUGGED KAGOSHIMAは、お土産屋さん以上・アパレル未満。おしゃれに尖り過ぎてなくて、なんか心地いい。そんなスキマを目指してる日本一ゆるい古着屋ですよ。(笑) 新しいこの環境で、のんびり続けられるお店の体制づくりに挑戦しながら、『これから古着屋をやりたい!』と思っている若い子がいたらどんどん教えますよ。同業者、仲間がいっぱい増えてくれたら嬉しいですからね。

古着の魅力は、着方とvibes次第で格好よく着れるところ。言葉で自己紹介をしなくても、ファッションはその人のセンスや清潔感、価値観とかを醸し出すことができる。身に着けていたら『お?』って周りの雰囲気が少し変わるような、いい意味でクセありなアイテムを置いてます。」

東京でもなかなか手に入らないような、高品質でセンスのいいアイテム。この土地に馴染むカラーやサイズ感、出水の地域に根付いたセレクトをするという中里さんの目利きはさすが。 ピンポイントで何かを探しているわけではなくてもちょうど欲しかった!という気持ちのモノに出会える、ミニマムでマニアックなお店。 RUGGEDに来てくれるお客さん。お店に並ぶアイテム達。出水の土地。全てのものにリスペクトと真心、強い愛情を注いでいる中里さんの心意気がひしひしと伝わってきた。

ドンとソファを置いた半屋外のようなガレージが店舗の奥にある。格好いいお兄さんたちが集まる秘密基地だ。 お店の外からジャリジャリとタイヤの音が聞こえると、常連のお兄さんたちがひょいと手を振りながらやってくる。放課後の駄菓子屋さんに集まる子たちが、そのままお洒落な大人に成長したような。彼らの穏やかな話し声と、心地よい音楽を聞きながらそんな想像をしていた。

そろそろ季節の変わり目、頑張った自分にプレゼントをあげよう。 「んちゃ!!」と遊びに行って、古着ソムリエ・中里さんに相談だ。

【RUGGED KAGOSHIMA】

出水市汐見町155

12:00-19:00

2月/8月は水曜定休

Instagram:@rugged_kagoshima

(text&photo. Atsuko Yamakawa)

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