出水麓(地名だと出水市麓町)。県内最大級の規模の武家屋敷群が連なる地区である。本町商店街からみると裏手に位置する。このエリアは現在、続々と新しい店や施設がオープンしている最中だ。その中のひとつを今回は紹介する。
ホテル「RITA(リタ) 出水麓 」である。こちらは出水麓内にある「宮路邸」、「加藤邸」、「土持邸」の、かつて実際に人が暮らしていた武家屋敷三棟を改修していることが特筆すべき点だ。(何を隠そう、書き手の私もアルバイトでお世話になっている!) 開業以来、県内外より宿泊客で賑わい、出水観光の拠点や武家屋敷群を堪能するために使われていることを実感する。
ここに泊まるとどんな気分が味わえるのか。私は仕事で日々出入りするが、さすがにそれだと真価を味わうことはできない。
三棟のうち、昨年先だってオープンした「宮路邸」の広々とした庭園には、ツツジ、アジサイ、柿の木などさまざまな植物が植えられている。その中に泰然と佇む日本家屋は、優美さと迫力を兼ね備え、趣深い。日中もいいが、夜の静寂に包まれた、凛とした雰囲気がさらにいい気がする。
きっと多くの人が少なからず抱く、雑事に追われた慌ただしい心も自然と鎮まるだろう。未宿泊なのにそう言うのもなんだが、薩摩武士の気分に少しでも浸れば自ずとそうなる気がするのだ。
なお、「宮路邸」以降も、「加藤邸」、「土持邸」の二箇所もオープンとなり、6月2日に全棟開業を迎えた。
出水麓は国の重要伝統的建築物群保存地区であり、実はこれまで施設を無闇に作ることが出来なかった。それが最近になって規制緩和され、そしてホテルの開業へも繋がったのである。
この流れは継続しており、前述の通り、現在、同地区には新しい施設が次々オープンしている。「志賀邸蔵美術館」、「restaurant KAIEDA」、「鶴姫」など、気になる場所が目白押しだ。これらが複合することで、出水の武家屋敷群がより活気を帯びていく。そしていずれは、出水といえばツルだけでなく、「武家屋敷!」と訪れる人からも、その名が挙げられるようになっていったらいいと願う。
(文・写真:Yuichi Komura(つばめ文庫))