【Pasta farian】料理と一緒に、空間も丸っと味わって。

【Pasta farian】料理と一緒に、空間も丸っと味わって。

「ん、これスパイス効いてるね」
「え?唐揚げに?」
「ちがう違う。タルタルソースのほう。」

家族で同じものを食べているはずなのに、感じ方が全くちがうのはおもしろい。

家族全員でコース料理を食べに行こうと今回選んだお店は、この春に出水商店街に新しくオープンした「Pasta farian」(パスタ ファリアン)。だいわ出水店の近くにあり、夜になると店前のピンクの店頭幕がライトアップされていて妙に目に止まる、私が気になっていたお店だった。

「このタルタルソース、ピクルスが入ってるからメリハリがあるんじゃない?」
「なるほど!でもおかあさんはピクルスを料理で使ったことないなあ。」
「刻んで使うと料理に合わせやすいよ」
「で、ピクルスって一回洗うんだっけ?」
「いやいや!洗わなくていいんだよ」

箸でタルタルソースだけをちょっとつまんで食べてみる母。から揚げだけ食べてみる私。

唐揚げひとつで、家族の中で話が弾んでいく。

誰かと共に食事をすることは、さまざまな視点が混ざり合い、より新しい発見がある。

私は、個人で経営されているお店で食事をするときに、オーナーさんがどんな思いで料理を作っているのかの過程を考えながら食べることが多い。

(このお店、この場所をオーナーさんは何をきかっけに選んだのかな)
(この壁のデザインはscAleの温子さんが手がけているんだよなあ〜)
(食材はどこから仕入れて、どのように調理しているのだろう…)
(オーナーさん、この素材の味を生かしたいからこの調味料に挑戦しているんだろうな)

正しいかどうかは置いておいて、
そんな妄想を膨らましながら私は食べる。

一口食べるだけで、たくさんのことを考えているので、家族で食べるとなるとそれぞれの感想がさらに飛び交う。

「このパスタ、きびなごにしっかり味がついているからソースがさっぱりめなのか!」
「ほんまや」
「あ、ワインくださーい」

食べるとわかる、組み合わせ。
そしてそれぞれ自由に感想を呟いたり、好きなお酒を頼んだり。

さあ面白くなってきたぞ。

外食では普段自分で作れない料理を味わうことも楽しいことだが、この人と・この時間・この場所で・共に味わう、というのも大切ではないだろうか。

空間も含めて丸っと身体で味わう。

ここ、パスタ ファリアンでそれが味わえたように思う。

コース料理もそろそろ終わりの頃、締めはやっぱりスイーツ。

クリームブリュレがすっと出される。
家族との賑やかな時間と私のお腹がたっぷりと満たされた。

ああ、もう、お腹いっぱいだ。

***

精算をすませて、私は店の出入り口に向かって廊下を歩いた。帰り際、少し長い廊下の真横にあるガラス扉があることに気づく。ディスプレイ?それとも焼酎のキープボトルを置く場所?空き店舗になる前の建物の名残りだろうか。入店した時は、全く気づかなかった。

昔はスナックだったのかもしれない。
これもまた、私の妄想。
あえて正解かどうか聞かずにいるのもまたいいと思う。

さらに出入り口に向かって進むと、カウンター席があった。

「次はあの場所でパスタランチもまた風情があるなあ。あそこで食べたらまた感じ方が変わりそうだ」

と次の来店に思いを馳せながら扉をゆっくり押し、パスタファリアンを出る。

入店前は明るかった昼の商店街もすっかり夜の顔だ。

雨雲が近いのか、

少しぬるくやわらかな風が私たち家族の間にそっと吹いた。


Pasta farian(パスタ ファリアン)
899-0205 鹿児島県出水市本町5-38
営業時間
ランチタイム 11:00-14:00
ディナー 18:00-22:00(金・土のみ)
水曜定休
※夜の営業日時については、事前に確認または予約することをおすすめします。


(文:Sayaka Iwashita)

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